忍士道は、内面を鍛える「心の修練」と、実践的な知恵を学ぶ「術の修練」に大別されます。心の修練では、平常心と鋭い洞察力を養います。一方、術の修練では、生活や防災、防犯に活かされます。
忍士道の修得体系
忍士道の修得は、「術より法を知り、道に至る」という三段階を経て進みます。まず術(具体的な技術)を学び、次に普遍的な法則(法)を理解し、最終的に生き方としての「道」へとたどり着きます。

★術を学ぶ:「共存」への第一歩
最初の段階である「術」の修練では、具体的な技術や技法を繰り返し実践します。
- 初段: 五行の術(木・火・土・金・水)に基づいた様々な術を学ぶことで、自然界の摂理と向き合います。
- 目的: 身体と感覚を研ぎ澄まし、心身の基礎を築くことが目的です。この段階は、周囲の環境と「共存」するための土台となります。
★法を理解する:「共生」を育む普遍的な原理
「術」の修練を深める中で、その背後にある普遍的な原理「法」に気づき、理解する段階です。
- 中核: 五輪の法(地・水・火・風・空)を通して、物事の本質を深く洞察する力を養います。
- 目的: 表面的な技術だけでなく、より深く普遍的な原理を理解することで、多様な存在との「共生」を可能にする思考力を育みます。
★道へと至る:「共栄」を実現する哲学
「法」を深く理解し体得した結果、それが生き方そのものとなり「道」となります。
- 到達: 五常の理(仁・義・礼・智・信)を実践することで、忍士道という揺るぎない哲学を確立します。
- 目的: 技術と哲学が一体となった生き方を実践し、関わるすべての存在と「共栄」し、平和的な解決へと導きます。

「感応」の能力
忍士道では、技術の修練を通じて心を磨き、問題解決や人間関係の円滑化を目指します。その核心となるのが、独自の「感応」という能力です。
「感応」とは、「感」によって物事の本質を洞察し、「応」によって最適な行動へと結びつけること。状況を的確に把握し、多角的な分析と判断から最善の対応を導き出す力です。
この「感応」こそ、忍士道の理念「共鳴水鏡」を実践するために不可欠なものであり、争いを回避し、「和」を体現する力となります。

感応プロセス
1. 状況把握
心を「水鏡」のように静かに保ち、三才「天地人(てんちじん)」の行動条件を用いて、物事の本質をありのままに捉えます。
- 天の理: 自然の法則や環境の変化、時代の流れ
- 地の理: 社会の基盤や現実的な状況
- 人の理: 人々の心情や心理状態
これらの要素を総合的に観察することで、全体像を正確に把握します。
2. 分析と判断
把握した情報に基づき、四象「林風雷陰(りんぷうらいいん)」の行動指針に従って、最適な判断を下します。
- 林の如く静観: 行動を起こす前に、静かに状況を観察し、洞察を深めます。
- 風の如く迅速: 状況を把握した後は、風のように素早く行動します。
- 雷の如く決断: 行動に移す際は、雷のように迅速な決断と勢いを持ちます。
- 陰の如く成果: 秘密裏に行動し、知られることなく成果を出すことを目指します。
3. 最適な対応
五輪の理である五輪「地水火風空(ちすいかふうくう)」の法則に則り、臨機応変に行動します。
- 地の安定: 揺るぎない基盤を築き、冷静さを保ちます。
- 水の柔軟: 状況に応じて、自らを柔軟に変化させます。
- 火の能動: 物事を動かすための推進力となります。
- 風の拡散: 情報を広めたり、影響力を波及させたりします。
- 空の根源: 形にとらわれず、物事の根本にある真理を見抜きます。
感応と共鳴水鏡の修得法
忍士道は、心を水鏡のように澄ませて物事の本質を映し出す洞察力と、異なる価値観を持つ人々の心情に深く共感し波長を合わせる共感力によって、「和」を体現することを目的としています。「感応」とは、この二つの力を用いて、最適な行動へと結びつけるプロセスです。
具体的には、九字護身法や忍び歩き、手裏剣術などを通して、集中力、客観力、そして分析力を養う体系となっています。こうした術の修練の中に、共鳴水鏡の訓練法が組み込まれています。
★洞察力を養う:水鏡の修練
瞑想法(密隠法)を応用した「水鏡」の修練では、心を澄んだ水鏡のように静かに保ち、物事をありのままに映し出すための訓練を行います。自身の主観や価値観を挟まずに物事を観ることが最も重要であり、静かな場所で呼吸など特定の対象に意識を集中することで、この能力を養います。
★共感力を高める:共鳴の修練
反復的な分析を用いる共鳴の修練は、他者との調和を生み出す力を高めます。まず、反復的な観察を通じて比較を行い、その中で生じる差異に気づくことが、分析力を養う訓練となります。この静かな心で得た分析力をもって、相手の感情や意図を深く理解し、心情に波長を合わせる「共鳴」へと繋げます。
