2022年に投石調査のインタビューを申し込んだところ、快く取材に応じて下さった木﨑宗家。その時に、忍士団向けの講習もお願いしたところ、こちらも快諾して下さいました。そして今年3月、木崎宗家と門人の方々が武蔵道場にお越しになり、ついに手裏剣セミナーが開催されました。今回は、その時の模様をレポートします。
セミナー内容
セミナーの内容は下記の通りでした。
・挨拶
・打剣(手裏剣の打ち方)
・掌剣(手裏剣を持っての攻防)
・打剣・掌剣併用
・まとめ
レジメを参加者に配り、説明しながら実演や実技稽古をおこないます。

打剣と掌剣
「打剣(だけん)」と「掌剣(しょうけん)」はあまり耳にしない単語ですが、わかりやすいイメージの説明がありました。「シュリケン」は漢字では「手裏剣」と書くのが一般的ですが、「手離剣」と書くこともあるそうです。「手離剣」は剣が手から離れるので、投擲として使うイメージで、和伝流では「打剣」というそうです。一方、「手裏剣」は剣を手の裏に隠し、持ったまま柔術の補助具として使うイメージで、和伝流では「掌剣」というそうです。
手裏剣を稽古する人たちは、手裏剣を「投げる」ではなく「打つ」と表現します。一般の人は「打つ」というと、手に持って「たたく」イメージになるのではないでしょうか。今回は、手に持って使う技法もあるため、記事では投擲を「投げる」の表現にしたいと思います。
ちなみに我ら忍者や一般の人々は、手裏剣というと十字や星型のものをイメージします。しかし、武術界では箸のような棒状のものを指すことが多いです。武芸十八般にも棒状の手裏剣が含まれ、侍も稽古していました。江戸の将軍様の徳川慶喜公は手裏剣が好きで、大政奉還後も稽古していたとの事です。
忍者は道具として十字手裏剣を使い、壁を登ったり扉をこじ開けたりします。敵と遭遇した場合は手に持って戦い、投げるのはまれで、投げても回収していたという説があります。携帯したのも1、2枚程度だったようです。
手裏剣を投げる
手裏剣は遠距離から一方的に攻撃できるメリットがあります。それゆえに、どれだけ遠い距離で投げられるかを修練するのが一つの目安でもあると思います。しかし和伝流は、どれだけ近くから投げられるかも重要視しているようです。手で届きそうな距離から投げる実演もありました。
セミナー中に近くから投げる練習をしていた時、参加者は指示されている距離よりも一歩後方から投げていました。普段から手裏剣の稽古をしている参加者は、一間半(2.73m)ぐらいを近い距離の基準にしているようです。刺さらなかった時の跳ね返りが危ないなどの理由もあると思います。しかし、近くで的に刺すのは初心者のやることだと潜在的に思っているのも一つと思います。
和伝流は、打剣(投げる)のみでは勝負は決しないと考える流派との事です。打剣(投げる)を起点に、手裏剣を手に持って、当身技、関節技、投げ技などの掌剣術(柔術)への移行があるのも特徴的です。逆に掌剣術(柔術)から離れて打剣(投げる)もあります。それゆえに近距離で投げられる事も重要なのでしょう。
様々な打剣の実演がありましたが、一間半(2.73m)ぐらいからの打剣が多かったです。失礼ながら遠距離をあまり稽古しないのかと思っていると、それを察したのかお約束なのか、遠い距離からの実演がありました。
会場でとれる距離が三間(5.45メートル)ですが、三間からの打剣の軌道は驚きでした。山なりに放物線をえがいて飛んでいくとか、高い位置から傾斜落下とかではなく、的に向かって真っすぐ水平に飛んでいくのです。その滑空状態からも的に刺さった時の威力からも、距離的に余裕がある感じがしました。



手裏剣を持って使う
手裏剣を手に持って使う「掌剣」は相手と組んで稽古をします。これは、相手が拳で突いてきたり、手や衣服を掴んできたときの対処方法です。手裏剣を投げるフォームがそのまま刺すなどの打撃や、手裏剣を使った関節技や投げ技などになります。手裏剣ほどの小さな棒を使用した技は「手之内術」とも呼ばれ、他の流派でも使われています。しかし、投げるシンプルなフォームで柔術の技になるのが和伝流の画期的なところです。
シンプルなフォームが技になるのは護身術として有用なシステムだと思います。手裏剣の代用品として、箸やボールペンなどを持っているだけで、非力でも大きな威力を出せます。また、日用品を武器として使うのは忍術に通じるものがあります。十字手裏剣もクナイも武器ではなく、忍び込む道具としての役割が大きいです。何かあれば道具を武器としても使える応用力、発想力が重要なのではないでしょうか。






手裏剣の攻防
「打剣」と「掌剣」を学んだところで、その二つを繋ぐ併用法へと進んでいきました。敵に対し、正面から手裏剣を投げてもよけられてしまいます。そこで、相手との距離や位置などがテーマになります。



フットワークを使用して前後、左右に移動しながら手裏剣を投げます。立つ、座るの上下の高さを変えて手裏剣を投げます。振り返るなど回転しても投げます。左手と右手で交互に投げたり、片手に複数手裏剣を持ち連射するなど沢山のバリエーションを各自が稽古していきました。
セミナー参加者の記録に撮影しましたが、公開のお許しがでました。様々な打剣をダイジェスト版にまとめた動画をご覧ください。
和伝流の思想
手裏剣術は殺活自在で、ダメージも調整できるとのことです。鋭利な先端を刺すにも狙う場所でダメージが変わります。また、丸い末端や棒の側面が当たれば、ダメージが少なくなります。さらに、構えた状態で手裏剣を投げなくても相手の殺意がなくなる境地もあるそうです。
流派名が「和」を「伝える」なので、「武」と「和」の矛盾を修行の末に成立させてしまうのでしょう。
文章では伝えられないので、木﨑宗家のお言葉を動画アップしますので、ご覧ください。
まとめ
今回のセミナーでは、手裏剣を投げる遠距離、握って突くなどの中距離、関節技などの近距離と総合的な武術を学ぶ事ができました。しかも、すべてが簡単な共通動作(卍巴の型)なため、思い出して復習する事も容易です。
忍士団向けにセミナーを開催していただきましたが、このような素晴らしい内容のセミナーは、ぜひ一般向けにも開催していただきたいと思います。
木﨑宗家、フィッシャー師範、亀井さん、ご指導ありがとうございました。


by 須田あゆむ

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