投石技術を求めて②(技術編)

忍者は武器や道具を携帯せず現地調達できれば怪しまれる事がないでしょう。手軽に武器になる石と投石技術は忍者に適したスキルだと思います。また、川などに石を投げ、川に飛び込んだように思わせる遁術など、投石を使う様々な忍術があります。技術編では忍者の心得や発想力など応用可能なものが沢山あります。

和伝流手裏剣道と印字打ちの歴史については下記をご参照ください。

和伝流手裏剣道のコンセプト

和伝流手裏剣道は印字打ちから手裏剣術へと移行した流派ですが、手裏剣術とは別に現在でも様々な物を投げて研究を続けています。また、護身術として法に触れない物、どのように携帯すればよいかなど、古伝を応用して時代に合った技法や携帯法を常に考えています。

木崎宗家は今回のインタビューに際し、様々なものを準備してくださいました。大変恐縮です。

説明している中でも何気に指で鉄球を弾こうとこちらを狙っている!

印字(印地)打ちで使う物

印字打ちで使う物として、初めにクルミと根付を見せていただきました。クルミは割って中に磁石を入れたもので、クルミ同士がくっつきます。先代から頂いたものとの事。中に重い鉄など入れれば威力も上がりそうです。根付は卵大の大きさで龍の彫り物がされており、顔に当たったらやばそうなものでした。

次にベーゴマでも平たいペチャと呼ばれるもの。手に持った感じもなかなか良いです。鉄球もあり、パチンコ玉より大きく重い。昔の廃棄になったパソコンのマウスを分解したものとの事です。昔のマウスにそんなものが入っているとは思いもしませんでした。この鉄球は印鑑ケースにピッタリ収まり、先代からこれぐらいは持っていると良いと教わったそうです。現代ではどのように携帯するか考えるのもポイントになるとの事です。ワッシャーはギターのピックケースに3枚入ります。

投げ銭といえば時代劇の銭形平次ですが、穴の開いていない二銭銅貨が出てきました。穴がある方が紐を通せて良いんじゃないの?と思いましたが、数を数えるとき「1,2,3」を昔は「ひー、ふー、みー」と数え、「二銭」は「ふー銭」、「ふせん」、「不戦!!」につながるからお守りとして持っている。。。と洒落の効いた一言。インタビュー中も随所にユーモアある発言がありました。場を和ませる空間操作は術を極め道に達した武道家の印象を受けました。

インタビューのきっかけになった本にサインをいただきましたが、「キサキカツヒコ」とカタカナで書かれており、こちらは「カタカナ」、「かったかな」、「勝ったかな」と武人としての勝負の心得をいただきました。。。

ファッションの中に投擲物があれば、すぐに対応できます。それがループタイや指輪と説明がありました。指輪は「ドクロリングが重くて良いですよ」とさらりとコメントが。木崎宗家が若かりし頃にイケイケなファッションでドクロリングやウォレットチェーンなど身に付けている姿を想像しましたが、護身として考案していると聞きちょっぴり安心しました。

折りたたみ式のスリングショット(パチンコ)も見せていただきました。投石は単に石を投げる原始的な方法から、紐の遠心力を使う投石紐、さらに弩(ど、いしゆみ)に進化しています。弩はクロスボウ(弓)の投石版で平安時代に日本にもありましたが普及しませんでした。スリングショットは携帯出来る投石機としては最強クラスのものではないでしょうか。

てぬぐい術

投石紐(スリング)の代用として使われたのが「てぬぐい」です。てぬぐいを二つ折りにして中央に石を入れ遠心力で石を飛ばします。

端に石を包めば分銅となります。この結び方が初めてみるやり方で、なんて実用的なんだろうと感動しました。思わず秘伝ではないのかと聞いてしまいました。しかし、「いや普通に教えている」との事。ネットへの掲載が可能か確認したところ「かまわない」と。とりあえず完成形をUPします。個人的には目からウロコの結び方でしたが、詳細の説明は省略します(笑)。気になる方は木崎宗家に直接お聞きすると良いでしょう。

その他のてぬぐいの使い方や護身術など実際に技をかけていただきました。

印字の欠点を補う

物を投げる行為は簡単です。それゆえに投石が失敗すれば敵に武器を与えることになります。そこで考えられたのが、分銅や手裏剣に紐をつける事です。攻撃を外しても回収して再度攻撃が可能です。

紐のついた手裏剣を使わせてもらいましたが、遠心力で飛ばすので深々と的に刺さり使い勝手も良かったです。今回は投石の話を中心にしていた為、手裏剣の打ち方を教わるのを忘れていたのが悔やまれます。

角手と龍噴

指輪が印字打ちとしては最適とお話がありましたが、その延長で忍者が使う角手をお土産にいただきました。右の物は木崎宗家が一から作ったもので、左二つはなんとプルタブから作ったものです。プルタブから角手が作れるなんて驚きです。常日頃から日常品をどのように使うか考えているのが推察でき、頭が下がる思いです。

なんだかクリオネのような悪魔のようなシルエットでかわいらしい。

鎖分銅についてお話を聞き、鎖をチェーンネックレスに加工したお土産を沢山いただきました。中にはワンタッチで外れてすぐ使える物もあり、それを嬉しそうに語る木崎宗家が子供のようで印象的でした。

また、目つぶしとして龍噴を実演していただきました。口に少量の水分を含み、霧状に噴出する方法で、プロレスラーが毒霧としても使っていました。本来は唾液をためて噴出するとの事ですが、ペットボトルのキャップの量の水分で見事な霧吹き噴出となっていました。

接近対応

和伝流手裏剣道の真骨頂は投擲から間合いを詰め掌剣を使うところにあります。鎧通し(短刀)で実演です。投げ打つと、ぐっさり刺さり恐ろしいですが、さらに手に持った状態での攻撃動作は背中がムズムズする感覚でした。

木崎宗家は柔和で気さくな印象ですが、時折手裏剣が突然飛んできたような鋭い気を放ちます。かと思えば、両手を掴んだときは心地よく、防衛反応も起きず吹っ飛ばされました。会話同様に場の空気の切替を自然に使っているのでしょう。

和伝流のマークについて

会のマークの意味も教えてもらいました。もとは根岸流手裏剣術の為、根岸流の手裏剣、自流で工夫した手裏剣、相手を制する短刀型の手裏剣の三つから成っているそうです。

様々な手裏剣なども見せていただきました。

最後に

木崎宗家には3時間ほど説明および実演していただき大変感謝しております。また、武蔵忍士団向けに講習などもして頂けるとの事でうれしい限りです。講習内容についても記事に出来たらと考えています。

インタビューにあたり補足資料などもいただきました。また、マルクス師範、岡松氏にも親切に対応いただき、道場の良い雰囲気が伝わってきました。

木崎克彦宗家、ありがとうございました!

by 須田あゆむ

番外編

いただいたプルタブ角手を自作しようと缶ジュース売り場をみて歩きましたが、大きいものが全く見つかりません。技術が進化したんだな~と思いました。自作はできないのかと諦めていたら、缶詰だ!とひらめきました。そして第一号を作成。思えば缶詰だって印字として打てる。災害時の非常食として保管する。多目的に使える実用的なものですね。

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